AI時代、会社の価値はどこにあるのか。
AIが文章を書き、情報を集め、整理し、分析し、企画案まで出してくれる時代になりました。
2024年のMicrosoftとLinkedInの調査では、世界の知識労働者の75%がすでに仕事で生成AIを使っていると報告されています。(※1
つまり、AIを使うこと自体では、差がつきにくい時代に入りつつあります。
これまで人が時間をかけていた「作業」は、これからますますAIが担うようになる。
では、人に残る仕事は何なのか。
私は、
判断すること。 決めること。 そして行動すること。
だと思っています。
先日参加した「AI時代の創造性」をテーマにしたアート思考のワークショップで、たんぽぽの話が出ました。
「たんぽぽ」と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは黄色い花や綿毛や葉。
でも、その花や葉が成り立つためには、地面の下の根っこがしっかりしていることが欠かせません。
私たちが目にしている花や葉は、その根っこがあって初めて成り立ちます。
企業も同じです。
私たちが普段目にしているのは、
商品。 採用。 営業。 制度。 Webサイト。 SNS。
いわば「地上に見えている部分」です。
だから問題が起きると、
採用できないから求人媒体を変える。 社員が動かないから研修を増やす。 売上が伸びないから営業施策を増やす。
と、見えている部分から手をつけます。
もちろん、それも必要です。
でも、その下にある会社の根っこはどうでしょうか。
この会社は何のためにあるのか。 何を大切にしているのか。 なぜ選ばれているのか。 誰にどんな価値を届けているのか。 どこへ向かうのか。 そして、迷ったときに何を基準に判断するのか。
AI時代になるほど、この「判断基準」が重要になります。
AIは、
情報を探す。 整理する。 比較する。 文章をつくる。 案を出す。 分析する。
こうした作業を担ってくれる。
でも、その中から、
どれを選ぶのか。 何を優先するのか。 何をやらないのか。 最後にどう決めるのか。
そこは人が担います。
Microsoftの2026年Work Trend Indexでも、AI活用が広がる中で重要になる人間のスキルとして、AIの出力の品質を管理する力が50%、情報を客観的に分析して根拠に基づいて判断する批判的思考が46%と挙げられています。(※2
つまり、AIが賢くなれば人が考えなくてよくなるのではなく、
AIが賢くなるほど、人が何を基準に判断するのかが重要になる。
社員100人がAIを使えば、100人がそれぞれ「もっともらしい答え」を出せる時代になります。
そのとき、会社としての判断基準が共有されていなかったらどうなるでしょう。
仕事は速くなる。
でも、会社として同じ方向に進むとは限りません。
むしろ、
速く進むのではなく、速くバラバラになる。
そんなことさえ起こり得ます。
最近は、AIに経営者の考え方や過去の判断、会社の情報を学習させ、社員が迷ったときに参照できるようにする取り組みも出てきています。
これは有効な使い方だと思います。
でも、そこで一つ疑問が出ます。
そもそも、AIに何を学習させるのでしょうか。
経営者の頭の中にある考え方が整理されていなければ、AIに学習させることもできません。
そして、会社は社長一人の考えだけで成り立っているわけでもありません。
会社の歴史。 なぜこの事業が始まったのか。 何を大切にしてきたのか。 なぜ選ばれているのか。 誰にどんな価値を届けているのか。 どこへ向かうのか。 顧客や社員、取引先にどう向き合うのか。 迷ったときに何を基準に判断するのか。
こうした会社そのものを形づくる情報があります。
ここで大切なのは、理念やMVVのような言葉を新しく作ることではありません。
立派な言葉を掲げても、社員の日々の判断や行動が変わらなければ意味がない。
大切なのは、会社の中にある情報や考え方を整理し、社員が理解できる状態にすること。
そして、さらに、
自分の仕事と結びつける。 迷ったときの判断に使う。 実際の行動が変わる。
ところまで浸透させることです。
言葉にした。 資料にした。 AIに学習させた。
それで終わりではありません。
社員の判断と行動が変わるところまでいって、初めて意味がある。
そして、ここで終わりでもありません。
会社は社員だけで成り立っているわけではないからです。
顧客。 取引先。 求職者。 株主や金融機関。 地域。 社会。
企業は、さまざまな人たちとの関係の中で存在しています。
社内では「こういう会社です」と言っているのに、顧客への対応は違う。
採用では魅力的なことを言っているのに、入社したら全く違う。
社員に対して大切にすると言っていることと、取引先への姿勢が違う。
これでは、信頼は積み上がりません。
逆に、
会社が何を大切にしているのかが社内に浸透し、 社員の判断や行動に表れ、 それが顧客や取引先、求職者、地域や社会との接点にも一貫して表れる。
そうなって初めて、企業とステークホルダーとの良い関係が育っていく。
私は、そこに会社の価値があると思っています。
世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025」でも、AI・ビッグデータ関連の技能が急速に重要になる一方で、創造的思考、柔軟性、レジリエンス、リーダーシップ、協働といった人間側の能力も引き続き重要だとされています。
また、2030年までに仕事で必要とされる中核スキルの39%が変化すると企業は予測しています。(※3)
つまり、AI時代は単に「AIを使える会社」が強いのではない。
AIを使いながらも、
自分たちは何者なのか。 何を大切にするのか。 どう判断するのか。 誰とどんな関係を築いていくのか。
を持っている企業が強くなるのだと思います。
たんぽぽの花や葉を支えているのが、目には見えない根っこであるように、
企業も、
商品。 採用。 営業。 制度。 発信。
という地上部分だけでは成り立たない。
その会社は何者なのか。 何を大切にするのか。 どう判断するのか。
そして、それが社員の行動から、顧客との関係、取引先との関係、求職者への伝わり方、社会との関係まで一貫してつながっていること。
AIは作業をしてくれる。
だからこそ、人が判断し、決め、行動し、誰かとの関係をつくるための会社の根っこが、これまで以上に重要になる。
AI時代、会社の価値は、目に見えるものだけではない。 その根っこが、社内外の関係にどう表れているか。
弊社は、そこにこれからの企業価値があると考えています。
<参考>
※1)
https://www.microsoft.com/en-us/worklab/work-trend-index/ai-at-work-is-here-now-comes-the-hard-part
※2)
※3)
https://www.weforum.org/publications/the-future-of-jobs-report-2025


