メディアに出たいなら、まずプレスリリースをやめる。
売れないのは、知られていないから。
採用できないのも、知られていないから。
だから、メディアに出よう。
そう考える経営者は少なくありません。
でも、売れないから「もっと知ってもらおう」とメディア露出を考えるのであれば、まずマーケティング施策を見直すこと。
メディアが見ているのは、
社会に伝える意味があるか。
読者にとって、伝える価値のある情報になるか。
企業側は「売りたい」と考える。
メディア側は「社会に伝える価値があるか」を考える。
この違いを理解しないままプレスリリースを出すと、企業が伝えたい商品やサービスの説明、つまり広告になる。
商品を売るために伝えたいのであれば、広告という手段を使えばいい。
そして、もう一つ混同されやすいのが「PR」という言葉です。
PRというと、宣伝すること、メディアに出ること、商品を知ってもらうこと。
そんな意味で使われることが多い。
だが、本来のPRは Public Relations(パブリックリレーションズ)。
企業とすべてのステークホルダーとの良好な関係を築く経営戦略です。
社員、顧客、取引先、求職者、地域、行政、金融機関、メディア。
メディアは、その中の一つにすぎません。
マーケティングは「売れる」をつくる。
パブリックリレーションズは「信頼と関係」を積み上げる。
重なるところはあります。
でも、企業経営では、この二輪で考えていく必要があります。
その土台になるのが、日々の経営そのものです。
会社は何者なのか。
何を大切にしているのか。
誰に、どんな価値を届けるのか。
どう判断するのか。
誰と、どんな関係を築いていくのか。
これは大企業だけの話ではありません。
中小企業でも、1人社長でも同じです。
私はこれまで、企業の中にある取り組みや事象を見つけ、メディアにつないできました。
ある企業では、社員の家族まで巻き込んだ新しい取り組みがあった。
別の企業では、社員自身が毎年、会社が大切にすることを見直し、自分たちで更新する文化があった。
この2社は、私がプレスリリースを書いたわけではありません。
それでも実際にメディアに取り上げられています。
私自身も、出版や講演、企業での活動を重ねる中で、何度もメディアに取り上げていただきました。
共通しているのは、「載せてもらうためのネタ」を先につくったのではなく、日々の活動の中に、社会に伝える意味のある事象があったこと。
日々の経営の積み重ねが、制度や文化、取り組みとなり、社会に伝える価値のある事象を生み出します。
地上に見えるのは、採用難や売上不振、社員が動かないといった経営課題。
その下には、それらを支える企業の根があります。
採用できないから求人広告。
売れないからSNS。
社員が動かないから研修。
メディアに取り上げられないからプレスリリース。
もちろん、こうした施策が必要なときもあります。
でも、地上に出た問題だけを直しても、根が整っていなければ、また別の場所に問題が現れる。
だから、地上の問題に小手先で対応し続けるのではなく、企業の根から整える。
そこが整うと、採用では会社の考え方に共感する人が集まりやすくなる。
営業では、毎回ゼロから信用をつくる負担が減る。
社内でも判断基準が共有され、社長が一つひとつ説明・指示・調整しなくても動きやすくなる。
そして、社会に伝える価値のある事象も生まれ、結果としてメディアにも取り上げられやすくなる。
つまり、経営者がすべてを押して動かさなくても、会社が回りやすくなる。
経営者の手間と経営コストも減っていく。
経営そのものを整えることが、企業とすべてのステークホルダーとの良好な関係を築く土台なのです。


