「いい人が来ない」は、求人票のせいじゃない。
採用がうまくいかない本当の理由を、誰も教えてくれなかった話
「また来なかった……。」
ある人事担当の方が、画面越しに深いため息をつきながらつぶやきました。
求人票は何度も書き直し、給与設定も相場より高くした。
掲載媒体も増やした。それでも、ほしい人材からの応募はない。
たまに来る応募者も、面接で話してみると「うちの社風とはなんか違うな」と感じる方ばかり。
「うちの会社の何がいけないんでしょうか?」
その問いに対し、私はすぐには答えませんでした。
なぜなら、求人票を磨く「手段」の前に、向き合わなければならない「本質」があるからです。

「いい人」という言葉の解像度
「御社にとって、"いい人"って、具体的にどんな人ですか?」
少しの沈黙の後、返ってきた答えはこうでした。
「えっと……まじめで、コミュニケーションが取れて、自ら主体的に動ける人、でしょうか。」
その答えを聞いて、私は確信しました。
これは求人票のスキルの問題ではなく、「情報の言語化」の問題なのだと。
「まじめで主体的な人」。それは、日本中のどの会社も求めている、いわば「どこにでもある言葉」です。その言葉の中に、その会社にしかない「らしさ」や「体温」は1ミリも含まれていません。
ほしい人材にメッセージが届かないのは、ターゲットの解像度が低いからではありません。「自社の解像度」が低いからなのです。

「あなたの会社で働く理由」を言語化できていますか?
想像してみてください。 あなたの会社に長く在籍し、生き生きと挑戦を続けている社員がいます。その人はなぜ、この会社で働き続けているのでしょうか。
給与、立地、福利厚生。それらは「条件」にはなりますが、「理由」にはなりません。 「この会社の空気感が好き」「社長の掲げる未来にワクワクする」「この仲間たちと高みを目指したい」。 こうした、目には見えないけれど確実に存在する**「信頼構築の根幹」**を、ちゃんと言葉にすること。
自社はどんな想いで存在し、何を良しとし、どんな未来を共に創りたいのか。 この土台を整理せずに求人票という「手段」だけを磨いても、本質的な共感は生まれません
「合わない人」が来るという、最大の経営リスク
採用において、多くの企業は「応募が来ないこと」を問題視します。
しかし、経営の視点で見れば「自社に合わない人が入社すること」の方が、遥かに大きなコストとなります。
採用コストをかけて入社してもらい、数ヶ月で「なんか違う」と去っていく。
その繰り返しは、経済的な損失だけでなく、現場で共に働く社員の士気をじわじわと削り、組織のコンディションを悪化させます。
なぜミスマッチが起きるのか。
自社の理念や文化が言語化されていないため、求人票に「誰にでも当てはまる綺麗な言葉」しか載せられないからです。
その結果、その言葉に反応した「自社には合わない人」が集まってしまう。
これは、防ぐことができる経営課題です。
言語化は、採用を「選ぶ」から「集まる」へ変える
自社の想いや価値観、そして「らしさ」を丁寧に見える化し、一貫したメッセージとして発信し続けると、劇的な変化が起きます。
「この会社の考え方、好きだな」と直感的に感じる人が、自然と引き寄せられてくる。 面接の場で「まさに、この人だ!」と互いに確信できる確率が上がる。
そして、社員自身が「うちの会社、最高だよ」と胸を張って友人に勧める。
「推しを増やすためのコミュニケーション」が自走し始めます。

手段を変える前に、言葉を整える
「いい人が来ない」と立ち止まっているのなら、まず自社に問いかけてみてください。
- 私たちは、なぜ存在しているのか。
- どんな価値観を大切にし、どんな挑戦を誇りとするのか。
- この場所で「眠りの状態を整え、人生を武器にする」ことの本当の意味は何か。
この問いに自信を持って答えられる一冊の『会社の教科書』があるとき、求人票は魔法のように輝き始めます。
遠回りに見えて、自社の情報を整理し、言語化することが、最短で最強の採用戦略なのです。
矢間あや
株式会社three jobs 代表取締役
https://three-jobs.com/

